サージェリーアーリーとは、できるだけ早期に手術を行うことを目的とした保険適用の外科矯正治療です。サージェリーアーリーでは術前矯正を開始してから約6か月〜1年後に手術を行います。

従来の外科矯正治療では、抜歯によって生じた隙間が閉じるまでに2年以上かかることも少なくなく、その間は手術を行えないのが一般的でした。

一方、サージェリーアーリーでは、歯を抜かない「非抜歯矯正治療」を基本とし、術前矯正の期間を短縮します。必要に応じて上下顎の手術を行うことで、非抜歯であっても十分に顎の形態改善を図ることが可能です。

さらに、連携病院との協力により、抜歯後の隙間が完全に閉鎖する前に顎矯正手術(顎変形症に対する手術)を実施する方法も行われています。

  • メリット1

    術前矯正期間が短くなる

    術前矯正が6ヶ月〜1年程度になります。
    術前矯正と術後矯正を合わせたトータルの矯正期間は、非抜歯矯正では1〜2年、抜歯をともなう矯正でも2年前後が一般的です。

    ※手術で切った骨の周囲では骨代謝が促進され歯の動きが早くなることが報告されおり、術後矯正の期間も一般的に短縮される傾向にあります。

  • メリット2

    手術予定が早めに確定

    矯正治療開始後、数ヶ月で大まかな入院手術のスケジュールが決まることが多く、予定が立てやすいです。

  • メリット3

    健康保険での治療が可能

    従来の外科的矯正治療と同様に、矯正治療と手術の両方が健康保険の対象となります。
    費用については、詳しくはこちらをご覧ください。

  • メリット4

    気になるあごの形を早めに改善できる

    従来の外科的矯正治療では、あごの形などの見た目が改善されるまでに治療開始から1~2年かかりました。サージェリーアーリーでは6ヶ月〜1年後の早い段階で顔貌(顔立ち)を改善することが可能です。
    また、受け口・反対咬合を外科矯正で治療する場合、手術時の下あごの後退量を大きくするために、術前矯正であえて受け口・反対咬合の状態を悪化させることが多いですが、サージェリーアーリーではこの期間を短縮することができます。

  • デメリット1 術後の咬み合わせが一時的に不安定になることがある

    術後矯正治療で、抜歯した歯の隙間を閉じる場合は、手術時の咬み合わせが一次的に不安定になることがあります。

  • デメリット2 術後のスプリント使用が必要になる場合がある

    退院してから2〜4週間程度、食事以外のスプリントの終日使用する場合がありますが、最終的にはきちんとした咬みあわせに改善します。

  • デメリット3 症状によっては対応している病院が限られる場合がある

    治療計画によっては、連携する病院が限られる場合もありますが、当院では十分に経験を積んでいる連携病院をご紹介いたします。

自己負担総額(保険診療適用)

矯正治療+外科手術=約30〜45万円

※年収約770万円以下で保険診療3割負担の場合の試算
(年収約770万円以上では、自己負担額が10〜20万円程度増える可能性があります。)

※高校生まではマル青医療費助成制度により原則無償です

費用については、詳しくはこちらをご覧ください。

サージェリーアーリー・外科矯正治療(保険適用)の治療例

下顎前突症

治療前

初診時22歳6ヶ月の女性が1)下顎の右側へのズレ、2)下顎が大きい、3)前歯が噛み合っていないことに悩んで来院されました 。

治療後

上顎第1小臼歯2本を抜歯しマルチブラケット装置を使用して術前に上顎の前歯を後退させました。顎矯正手術で下顎骨を後退させ、術後矯正で歯並びと咬み合わせを改善させました。

気になる症状 下顎の右側へのズレ、下顎が大きい、前歯が噛み合っていない(22歳女性)
治療計画 下顎前突症・下顎右側偏位
外科矯正治療(マルチブラケット)
上顎左右4番の抜歯
期間 2年6ヶ月
費用 約22万円(健康保険適用)

本症例におけるリスクや副作用

  • ① 最初は矯正装置による不快感や痛みがありますが、数日~1週間で慣れることが多いです。
  • ② 治療中は、矯正装置の影響で歯磨きが難しくなり、むし歯や歯周病のリスクが高まります。
  • ③ 歯を動かすことで、歯根が吸収され短くなる場合があります。また、歯ぐきが痩せて下がることもあります。
  • ④ 治療中に顎関節症状が現れることがあります。
  • ⑤ 口腔内の粘膜とブラケットがすれ合って擦過傷(さっかしょう)ができることがあります。

従来の保険診療の外科矯正治療では、まず術前矯正治療で歯を動かし、そのあとに外科手術をおこない、術後矯正治療で歯並びと咬み合わせを矯正していました。

サージェリーファースト(Surgery first approach : SFA)では、術前の矯正治療を省略し、まず手術を行った後、矯正装置を装着して歯並びや噛み合わせを仕上げます。

背景には、手術技術の進歩により信頼性が高まり、手術前に綿密に咬み合わせを仕上げる必要がなくなりました。一方、術後の矯正治療は従来の方法に比べるとより煩雑になりますが、すでにさまざまなタイプの歯並びを矯正してきた矯正歯科医にとっては、とくに難しいアプローチではありません。

健康保険が適用されない場合が多い海外の医療機関では、手術先行のサージェリーファーストが主流になりつつあります。

  • 1

    術前矯正が省略されます

    当院で外科矯正治療の治療計画を立案し、手術をおこなう病院をご紹介します。
    術前の矯正治療は行わず、顎矯正手術(顎変形症の手術)を先に行います。入院期間は1週間以内が多いです。

  • 2

    最初に顔貌(顔立ち)を改善できる

    従来の外科的矯正治療では、顎の形などの見た目の改善には治療開始から1~2年かかるのが一般的です。サージェリーファーストでは、手術で最初に顔貌(顔立ち)を改善することができます。
    また受け口・反対咬合の術前矯正治療では、一般に術前に下の前歯を前方に移動させ、手術前に受け口・反対咬合を悪化させる必要がありました。これは手術の際に下顎の後退量を大きくするために必要な処置ですが、サージェリーファーストでは、これを回避することができます。

  • 3

    矯正装置のバリエーションが豊富

    顎矯正手術(顎変形症の手術)が終わったらデコボコや噛み合わせを治す矯正治療を開始します。
    保険診療のルールにしばられないため、マウスピース型矯正装置(インビザライン)や、舌側矯正 (リンガル・歯の裏側のワイヤー矯正)でも治療が可能です。もちろん従来の外側ワイヤー矯正でも治療可能です。

  • デメリット1 健康保険が使えず自由診療になる

    サージェリーファーストでは、矯正治療や手術は健康保険対象外の自由診療です。
    健康保険の規定により保険診療と自由診療の併用はできませんので、矯正治療も手術も自由診療となります。
    おおよその費用ですが、矯正治療が100万円以上、顎矯正手術も90万円~250万円となります。

  • デメリット2 術後の咬み合わせが一時的に不安定になることがある

    手術後の咬み合わせが一次的に不安定になることがありますが、最終的にはきちんとした咬みあわせに改善します。

  • デメリット3 術後のスプリントの使用

    退院してから2〜4週間程度、食事以外にスプリントの使用が必要になる場合があります。

  • デメリット4 対応している病院が限られている

    当院では十分に経験を積んでいる連携病院をご紹介いたします。

サージェリーファーストでは、矯正治療や手術の費用は健康保険対象外の自由診療です。

1

矯正治療(当院への支払い)

通常の当院の矯正治療費(総額で約90〜150万円)+(110,000円の外科矯正連携費用)

外側ワイヤー矯正、マウスピース型矯正装置(インビザライン)、舌側矯正(リンガル矯正・歯の裏に矯正装置をつける矯正治療)に対応しています。詳しくはこちらをご覧ください。

2

顎矯正手術(病院へのお支払い)

手術と入院 : 下顎または上顎のみの手術約90〜120万円 上下顎の手術約150〜250万円※健康保険対象外の自由診療

3

総額

約190万円〜300万円(外側ワイヤー矯正と顎矯正手術の総額)

サージェリーファーストで顎矯正手術(顎変形症の手術)をおこなうとき、
歯には何も装置はつかないですか?

手術後に上下のあごの位置を固定するため、歯に透明なクリアボタンを装着する場合があります。

サージェリーファーストで顎矯正手術を先に行い、そのあとマウスピース型矯正装置(インビザライン)で歯並びをきれいにし、咬み合わせを改善する方法です。
外科矯正治療をする場合、外側または舌側ブラケットとワイヤーによる矯正治療が一般的でしたが、マウスピース型矯正装置(インビザライン)を使用することで、より快適でストレスのない矯正治療を行うことが可能です。

小下顎症

治療前

初診時20歳1ヶ月の女性が、1)下顎が小さい、2)上の歯が出ている、ことに悩んで来院されました。

治療後

サージェリーファーストとして治療を開始。まずは顎矯正手術で上顎骨を上方に移動し、オトガイ形成術を併用して下顎の先端を前に移動する顎矯正手術を提携病院にて行いました。術後矯正は、マウスピース型矯正装置(インビザライン)にて上下の正中の一致と上下前歯のさらなる後退をおこなっています。

気になる症状 下顎が小さい、上の歯が出ている(20歳女性)
治療計画 上顎前突症
小下顎症
外科矯正治療
※サージェリーファーストとマウスピース型矯正装置(インビザライン)による治療
左側上下4番の抜歯
期間 3年2ヶ月
費用 116.6万円(歯科矯正治療のみで手術代金は別途)

本症例におけるリスクや副作用

  • ①最初はマウスピース型矯正装置による不快感や痛みが出ることがありますが、数日〜1週間で慣れることが多いです。
  • ②治療中はマウスピース型矯正装置の影響でプラークが停滞しやすくなり、むし歯や歯周病のリスクが高まります。
  • ③歯を動かすことで、歯根が吸収され短くなる場合があります。また、歯ぐきが痩せて下がることもあります。
  • ④治療中に顎関節症状が現れることがあります。
  • ⑤マウスピース型矯正装置使用時間が1日20時間未満だと、歯が計画通り移動せず、十分は歯並びや噛み合わせをるくることが困難な場合があります。

初診相談にてサージェリーファーストのメリット・デメリットや、治療の詳細についてご相談できます。
顎変形症や顔のゆがみでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。